インプラント治療の流れについて

インプラント治療を受けられている方が昨今増えているように感じます。 昔は骨に人工物を埋め込むことに抵抗がある方も多くいらっしゃったのかも知れません。
また、費用も自由診療のため高額で、「たくさんお金をかけても長持ちするのか?」という不安があり、手が出せない方もいたかと思います。
しかし、インプラントも徐々に普及し、経験された方が増えて体験談を聞くことができるようになると、「安心してやってみよう」と思えるようになってきたのかも知れません。
これからインプラントを始める方、今現在迷っている方、今後ご自身の歯が長持ちしないかも知れないと不安になられている方に、インプラント治療がどのように進められるのかを今回はお話ししたいと思います。
インプラントの基本的な知識
まずはインプラントについての基本的なことについてお話ししたいと思います。 インプラントは身体の中に埋め込む物のことを言います。 ですので、歯科で言うインプラントは、正確には「デンタルインプラント」と言います。
材質はチタンやハイドロキシアパタイトコーティングされたもの、ジルコニア製のものがあります。 日本ではチタン製が主に主に使用されていますが、近年ではジルコニア製も認可され選択肢が広がっています。
チタンはアレルギーが出にくい素材のため、安心して使用できます。 ハイドロキシアパタイトコーティングされているものは骨の主成分と同じため、骨との結合が早いとも言われています。
インプラントは、骨に埋まっている部分を「インプラント体」、その上の土台部分を「アバットメント」、歯の部分を「上部構造」と呼びます。
【メリット】
① 自分の歯のように噛めること
② 隣の歯を削ったり負担をかけないこと
③ 異物感が少ないこと
④ 様々な歯を失った状態に対応ができること
⑤ 長期的に使用が可能なこと
【デメリット】
① 保険が利かないため費用が高額になる
② 外科手術が必要になる
③ 治療期間が長いこと
インプラント治療前の診査診断
インプラント治療には術前の診査診断が欠かせません。まずはレントゲンやCTを使って、骨がしっかりあるのか調べます。
インプラントを入れるための骨がしっかりあることを確認できたら、最終的にどのような歯を入れるのかを想定した歯のシミュレーションを作成します。 これを「診断用ワックスアップ」と呼びます。
最近はデジタルで行われることも多くなりました。 お口の中の型取りをして歯科技工士に依頼しますが、口腔内スキャナーというカメラのような装置を用いて型取りすることもあります。
そして、インプラントには外科手術がつきものですので、全身の健康状態の把握もしていきます。 がん治療や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療を受けている方で、骨の代謝に関わる薬などを使っている方は、インプラントができない場合もあります。
その他にも脳血管障害や血液疾患、糖尿病や自己免疫疾患、腫瘍やアレルギー、喫煙などリスク因子はたくさんあります。 ですので、必ず既往歴(きおうれき)、現病歴、服薬の状態を伝えるようにしましょう。 また、若年層で健康状態が良くても、顎の成長が終わっていない場合はインプラント治療はできません。
インプラントを入れるにあたり、歯周病があるか否かもとても大きな要因の一つになります。 歯周病のコントロールができていないお口の中にインプラントを入れると、「インプラント周囲炎」というインプラントへの感染症を起こすリスクが高くなります。 そのため、歯周病がある場合はインプラント治療前にしっかりと歯周治療を受けていただく必要があります。
また、インプラントを入れる歯の近くに根尖病巣(こんせんびょうそう:根の先にできる膿の袋)があれば、根管治療と呼ばれる治療が優先されたりもします。
治療計画
インプラントが可能となれば治療計画が立てられます。 まずはインプラントの本数や上部構造の形態について患者さんと相談します。
多くの欠損部位を少ないインプラントで支える入れ歯の方法や、欠損歯の本数に合わせてインプラントを埋入して取り外さずに使える上部構造を作る場合など、個人によって様々な選択肢を提案し相談します。
上の歯か下の歯か、1本か複数本か、前歯か奥歯か、他の歯の状態はどうか、骨や歯肉の状態はどうか、年齢や生活環境、費用との兼ね合いも考えて相談していきます。
インプラント手術
さて、治療計画ができたら今度は手術になります。 手術は様々な方法が用いられますが、昔からのスタンダードな方法としては、歯肉を切って開いて骨の面を見えるようにして削っていく方法でしょう。
しかし、条件によっては切開をしないで歯肉の上から穴を開け、そこから骨を削っていく方法もあります。 その方法であれば患者さんの負担も少なく、他の組織にも優しい方法になります。 しかし、骨の状態などにより難しい場合は、切開しての従来の手術方法をとります。
手術の際には様々な技術が用いられます。コンピューター支援による「ガイデッドサージェリー」や「ナビゲーションシステム」というのがその方法です。 これらの方法を用いることで、時間の短縮や負担の軽減、正確さが格段に上がりました。
それから、手術には「1回法」と「2回法」があります。
1回法:インプラントを埋入してその上に高さのあるネジを入れ、そのネジが歯肉の上に出るようにする方法です。 手術が1回で済むメリットがあります。
2回法:薄いネジでインプラントに蓋をした後、歯肉で覆って完全に埋めてしまう方法になります。 骨と結合した後に、もう一度頭を出すための簡単な手術を行います。
どちらにもメリット・デメリットがありますが、インプラントを埋入した時の条件によって出来る出来ないがあるので、歯科医師の判断でどちらで進めるか決められます。
その他のテクニック
インプラント手術にはただ埋めるだけではなく、様々な技術が使われます。 例えば、抜歯をしてすぐインプラントを入れる方法があります(抜歯即時埋入)。 これは治癒期間の短縮や周りの組織が減るのを抑えてインプラントが埋められるメリットがある反面、抜歯した歯の条件によっては感染リスクが高くなるデメリットもあります。
他に、インプラントを入れた時に骨がしっかりしており条件が良ければ、その日に仮歯を入れることもあります(即時荷重)。 もちろん入れた直後はインプラントに大きな負担はかけられないので、条件が整わない場合はできませんが、例えば前歯を治療する場合などは、手術と同時に(仮歯ではありますが)固定された前歯を得られるという審美的な利点もあります。
また、上の奥歯で上顎洞(じょうがくどう:副鼻腔)までの距離が短くインプラントが埋められない場合などは、「ソケットリフト」や「サイナスリフト」という手法が使われます。 それらは上顎洞の粘膜を持ち上げて骨を造っていく方法です。
上の奥歯は抜歯をして時間が経つと骨が薄くなることが多いので、この方法によりインプラントを入れることが可能になります。 しかし、骨を作る期間が必要なため、治療期間が長くなるデメリットもあります。
他にも骨を作る方法として、抜歯をした直後にその部分の骨や歯肉が痩せてしまわないように、人工骨やコラーゲンのスポンジを入れて骨の吸収を抑制することもあります。
インプラントのメインテナンス
よく患者さんに聞かれるのが、「インプラントをするとメインテナンスが大変なんでしょ?」ということです。 しかし、この質問に対しての答えは「インプラントだからというわけではない」ということです。
ご自身の歯も皆さん大切だと思います。 インプラントもご自身の歯と同じなのです。 ただ、治療に高額な費用と期間を費やしているので、ダメになった時に「無駄になってしまった」という感覚が大きいのだと思います。
インプラントは虫歯にはなりません。 しかし、自分の歯と同様に歯周病にはなります。 先ほども触れたように、インプラントの場合は支えている骨が減り、最悪の場合抜けてしまう「インプラント周囲炎」という病気があります。 そうならないために、定期的なメインテナンスで予防していくことが大切なのです。
メインテナンスでは清掃状態のみならず、噛み合わせのチェックや上部構造の変化、歯肉の状態や骨の状態など、様々な点でチェックをしていきます。 そして個人個人に合わせてクリーニングを行い、様々な指導を行います。
時々、「インプラントをどこに入れているかわからなくなった」という患者さんがいます。 それだけ自分の歯と同じように噛めているということです。 そうなるとインプラントを意識して磨くという感覚は無くなっていますので、定期検診で指導を受けることで、改めて丁寧なケアへの意識が芽生えてくれることも大切だと思っています。
終わりに
インプラント治療には様々な方法があることがご理解いただけたでしょうか。
診査診断からメインテナンスまで、すべて患者さんの状態に合わせて最良の選択が行われます。
ご自身のお口の中にどのような治療が施せるのか、一度歯科医院で尋ねてみるのも良いと思います。
