虫歯は防げる?虫歯の原因と予防法まとめ

2025年05月19日(月)

虫歯がうつるから親子間での食器の共有を避けましょうという話を聞いたことがあるかもしれません。この話、実は現在ではあまり気にしなくてよいという論説があります。

虫歯に関してはこの数十年で研究が進み、以前当たり前だったことが覆された部分も多くありますので、現在考えられている内容をご紹介いたします。

1.虫歯は親子でうつる?

虫歯はミュータンス菌というバイ菌と砂糖でできますと以前は説明していました。この細菌は生後19~31か月頃に両親から伝播すると言われますので、子供の虫歯予防には親子間の食器共有や口移しを避けましょうという話が生まれたのです。

しかしながらその後の研究で虫歯を起こす細菌は多種にわたりミュータンス菌だけが原因ではないことが分かっています。

それらの細菌すべての感染を防ぐのは困難であること、また感染したとしても適切な予防ケアで虫歯は発症が防げるため、それほど親子間の食器共有は神経質にならずとも良いと考えられます。

実際子育て中の歯科医師仲間に話を聞いたところ、気にしていないという人の方が多かったです。ただしご家族に虫歯が多い方がいる場合は当然子供への虫歯菌の感染リスクは上がります。

まずは大人の方のお口の中の環境を整えること、食事習慣の見直しをすることが、食器共有を気にするよりも効果的に生まれてくるお子さんへの虫歯菌感染リスクを下げることにつながります。

2.虫歯とはどのような状態か?

虫歯は歯が酸によって溶かされて穴が開いた状態を指します。

まず口の中に入った食物(砂糖をはじめブドウ糖、果糖、乳糖、調理でんぷんなど)を虫歯の原因菌が食べることで酸が作られます。

それにより歯の表面についている歯垢(プラーク)の中が酸性に傾いていきます。そうすると酸に強い虫歯の原因菌がさらに増え、歯の表面がますます酸性になっていきます。そのため歯の表面が溶かされて穴が開いていくことになります、これを「脱灰」と呼びます。

しかしそれでは歯は穴が開く一方ですので体には歯を修復する力も備わっています。

唾液に含まれるカルシウムイオン、リン酸イオンなどが歯の表面の溶けた部分を修復する「再石灰化」という機能があり、この脱灰と再石灰化が綱引きをするようにバランスを取って歯の表面は維持されています。

なんらかの原因でこのバランスが崩れると修復が追い付かずに目に見える穴が開くのです。

3.虫歯の原因は?

虫歯のできる要因は歯・細菌・唾液・飲食物・フッ化物などの相互作用の結果として歯の表面の「脱灰」・「再石灰化」のバランスが変わることと説明されています。

これではよくわからないですね、先ほどの脱灰と再石灰化のバランスが崩れる要素がたくさんあるということです。

また虫歯は生活習慣病の一つと言われています、現在では「生活習慣」のほか、社会的な「外部環境因子」も関係していると考えられるようになっています。

多くの原因がありますが、まずは歯、細菌、唾液、飲食物、フッ化物の5つを解説いたします。

4.虫歯になりやすい歯、なりやすい場所は?

虫歯になりやすい部分、なりやすい時期は確かにあります。

歯の噛む面には効率よく食べ物をすりつぶすための溝がありこれらは深い溝になりがちなため、歯ブラシが当たらずよく虫歯が発生します。

また歯と歯の間も同様に歯ブラシが当たらないため清掃不良となりがちです。これらは虫歯ができやすい代表的な部分でしょう。

そのほか歯並びなどの影響で清掃しにくい部分やかぶせ物などのキワも該当します。

虫歯になりやすい時期としては生えたての歯に一番虫歯リスクがあると思われます。

これは生える途中はまだ歯ぐきに一部隠れている部分があること、生えたての歯は表面がまだ柔らかく脱灰しやすいこと、すり減っていないため歯の溝も深いことなどが挙げられます。

新しい永久歯が生える6歳ころは特に注意して奥歯をみてあげましょう。

またご高齢の方は歯ぐきが下がり根が露出した部分がリスクとなります、これは根の部分は酸への耐性が低く溶けやすい構造であるためです。これらの歯の形による要因はそこを注意して清掃すること、歯の表面を強化するフッ化物配合歯磨き粉などの使用が対策となります。

具体的な方法は歯科医院で個別にご相談いただくのが最適です。

5.虫歯をつくる細菌とは?除菌できないの?

虫歯を作る原因菌は先にお話ししたように多種に及ぶことがわかっています。

これらはお口の中に常にいる菌ですので完全に除菌することは残念ながら不可能です。お口の中の細菌の比率は人によって様々で常に変動していると言われています。

虫歯の菌が好む食品を多く摂取すれば虫歯の原因菌は増殖します。したがって細菌に対しては退治するのではなく歯ブラシで食物とともに極力取り除くことが現実的な対処法になります。

虫歯を治療した場合も壊れた部分は修復していますが、原因となる菌は残っていますので残念ながら虫歯は完治がないのです。

治療後も定期的なチェックとメンテナンスが再度虫歯を作らないためには重要です。

6.唾液の働きは?天然の抗菌物質

酸によって破壊された歯の表面を修復する力が唾液にはあります。

そのほか唾液には酸を中和してくれる緩衝作用という機能もあるのです。その作用が強い唾液が多く出る方は虫歯への抵抗力が強いと考えられます。

逆に唾液の分泌量は様々な原因で低下します。普段飲まれるお薬の中には唾液の量が減るお薬も多くありますし、シェーグレン症候群という病気や加齢などでも減少していきます。

唾液の量の減少は虫歯の増加、口腔カンジダ症、味覚変化、その他多くの影響がありますので気になる方は医療機関でご相談なさってみてください。

7.虫歯になりやすい食べ物、食べ方は?

虫歯菌が食べるのは砂糖だけではありません、ブドウ糖、果糖、乳糖、麦芽糖、ガラクトース、調理したでんぷんなども含まれます。

一方、虫歯菌が栄養源にできないのが低う蝕性甘味料(オリゴ多糖、キシリトール、エリスリトールなどの糖アルコール、アスパルテーム、ステビオサイド、スクラロースなどの高甘味度甘味料)です。

砂糖だけが原因ではないので食べないようにするのは現実的ではないでしょう、極端に摂取しすぎなければよいのではないでしょうか。

ただし粘着性の強いお菓子類などや酸性度の高い食品を好む方はやはりリスクになりますので重要なチェック項目です。

また食べ方に関しては重要な注意点があります、それはだらだら食べをしないことです。

口の中に食べ物が入ってからしばらくは上記の通り歯の表面のプラークが酸性に傾きます、しばらくすると唾液がこれを中和して中性に戻しますが、その間に再度口の中に食べ物が入るとまた酸性に傾き、なかなか中性に戻らなくなります。ですので、食事や間食はなるべく回数をまとめること、だらだら食べないことが虫歯予防には重要になります。

8.歯を強くするフッ化物の力

歯磨き粉には虫歯予防成分としてフッ化物というものが含まれています。これは歯の表面を強化し、再石灰化を促すなど虫歯を予防する効果が実証されている成分です。

実は現在虫歯予防に最も有効な方法として証明されているのはブラッシングではなく「1日2回以上のフッ化物配合歯磨き粉によるブラッシング」なのだそうです。歯ブラシだけでは足りないということです。

これは理由があり、歯ブラシの毛先は歯の溝や歯と歯の間など上記で虫歯になりやすい部分に物理的に当たらないからです。

ただしブラッシングで口の中に残った食物を除去すること、歯の表面の歯垢を極力取り除くことは重要であるため、歯ブラシをしなくていいわけではありません。ブラッシングにプラスしてフッ化物配合の歯磨き粉を用いることが自分でできる一番の虫歯予防効果がある行動となります。

9.まとめ

虫歯に悩まれている方、これから子供に虫歯を作りたくない方に少しでも参考になれば幸いです。

以前より虫歯に関しての研究は進んできていますが、沢山の要因が関わるため一つの明確な解決法というものはありません。それぞれのお口の中の状態にあった対処方法を見つけることが大切です。

そのためには専門知識を持った歯科医師、歯科衛生士のアドバイスを受けられることが一番の早道となりますので、ご心配な方はぜひ一度歯科医院でご相談ください。

そらいろファミリー歯科

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