虫歯じゃないのに歯が欠ける!?NCCLを知っていますか?

2025年07月28日(月)

虫歯じゃないけど歯がしみる…、冷たい物だけではなく、歯ブラシが当たるだけでも痛い…、痛くはないけど舌で触ると何か引っかかる…、そんな症状はありませんか?

よくテレビでも耳にする知覚過敏でしょ?知覚過敏用の歯磨き粉を使って様子をみようとか、痛くないからまぁいいやと簡単に考えてはいませんか?

もしかすると、それ歯の一部が喪失するNCCLかも知れません。

今回はそんな耳慣れないNCCLについてのお話です。

1.くさび状欠損からNCCLへ

私たちの歯科業界では歯科の二大病変としてう蝕(虫歯)と歯周病があります。

しかしそれ以外に第三の歯科疾患と言われるほど多くあるのがTooth wear(トゥースウェアー)です。

Tooth wearは虫歯以外の原因で生じる歯の喪失のことです。

私たちは普段から食事をし、歯を磨きます。その他にも新品の衣類の値札を外す時に歯を使って噛み切ってみたり、大工さんなんかは釘を咥えたりなんかもしているかも知れません。そんな日々の何気ない生活習慣の中で歯を使っていくうちに擦り減りが起きていきます。

主な原因として噛むことや歯ぎしりで生じる「咬耗」、ブラッシングなどで生じる「摩耗」、酸性食品の摂取などによる「酸蝕」があります。

咬耗は前歯の先端や奥歯の咬む面に生じます。摩耗は歯の側面、特に歯の根元に多く見られます。酸蝕は酸が触れる部分、お口の中全体だったり、酸っぱい梅を同じところで咬む癖があって限局していたり、あるいは逆流性食道炎で胃酸の逆流により前歯の裏側に生じることもあります。

そして酸蝕に加えて、摩耗や咬耗が重なることがあります。(これをerosive tooth wearと言います)

酸によって歯の表面が溶かされ柔らかくなっている部分に咬む力や歯ブラシなどによる刺激が加わることでより歯の喪失が大きくなります。

例えば美肌効果を期待したり、運動をしている人で疲労回復のためにクエン酸を普段から飲んでいる方なんかは酸蝕に注意が必要です。

そしてTooth wearの中で歯頸部に限局したものをNCCL(Non Carious Cervical Lesion):非う蝕性歯頸部歯質欠損と言います。

歯科医療従事者であれば以前から、くさび状欠損(WSD)と良く耳にしていたかと思います。

カルテに記載する際にも用いていた表現ですが、くさび状欠損は正確には歯の根元に「く」の字型にくっきりとした歯質の喪失が生じているものを言います。NCCLの中には必ずしもくさび状欠損のようなくっきりとした歯質欠損のみが生じる訳ではなく、丸みを帯びたU字型をした物や、虫歯治療で用いる詰め物の境目に生じる複雑な形状をしたものもあります。

それを保険上ではどの形もざっくりと「くさび状欠損」と表現していましたが、最近はNCCLの中のくさび状欠損という様に分類し、それぞれの原因を細かくチェックするようになってきました。

2.NCCLの原因

歯ぎしりをする男性

①摩耗

摩耗は簡単に言うと擦り減りです。

歯は上下の歯が噛み合わさり、擦り合うことで咀嚼をします。

その刺激が積み重なると摩耗していきます。(摩耗の中で噛むことで生じるものを咬耗とも言います)歯ぎしりの強い人では歯が真っ平らになっていることもよく見かけます。

そして歯ブラシにより擦られることで歯も擦り減ります。

歯ブラシだけでは簡単には喪失は生じにくいですが歯磨き粉に含まれる研磨剤によってより摩耗を進行させます。

②アブフラクション

アブフラクションは咬む力により歯の根元に力が集中し歯がたわむ事で、引っ張られている側の歯のエナメル質とセメント質の境目に欠けができる物を言います。

歯科の業界では、くさび状欠損の原因=アブフラクションという見解が主流となっていました。

しかしこの現象に関しては検証実験がなされた訳ではない様です。

その後も研究は行われましたが研究が成功することはなかったようで次第に理論的仮説と言われるようになりました。

ですので、確定診断にはなりませんが、可能性として注意深く経過を見ていく必要があります。

ともあれ、咬む力の負担により歯の動揺に繋がったり歯周病にも悪影響を及ぼすのでそういった意味でのチェックも必要です。

③酸蝕

簡単に言うと虫歯ではないけれど歯が溶ける病気です。

歯の硬組織は主にカルシウムとリンの結晶で出来ています。

そのカルシウムは酸に溶けるという性質があります。酸性飲食物を摂取すると徐々にカルシウムは溶け出します。

歯の表面(エナメル質)の溶けるpH(臨界pH )5.5〜5.7以下の状態が長時間、頻回に続くと再石灰化が追いつかず歯質の欠損が生じます。

それは酸性の飲食物の流れる部分、溜まる部分では症状は大きくなります。

また習慣性の嘔吐でも起こります。胃酸はpH 1〜2ですので、吐いた時に胃酸が良く触れる歯の裏側が溶けやすいのも特徴的です。

3.NCCLを予防するには

①酸蝕に対する対策

1つ目に酸蝕に対策があります。柑橘類やお酢などの酸性食品の摂取を控えることで予防する事が出来ます。

酸性食品と言うと単に酸っぱい物を想像しがちですが、一概に酸っぱい物ばかりが酸性食品ではありません。

酸性の食品の中でも特に飲み物は嗜好品の中でも頻回摂取や口腔内に長くとどまる事が酸蝕症を加速させる可能性があります。

【酸性食品の一例】

酸性食品

 オレンジ いちご パイナップルなどのフルーツはpH3〜4

 ビールpH4.3   スポーツ飲料pH3.5   ワインpH3.4

   コーヒーpH5   コーラなどの炭酸飲料pH2.2

このコーヒーはお砂糖を入れない状態です。お砂糖を入れると虫歯をつくる細菌が酸を酸性するので酸性食品プラス細菌の酸でより虫歯が出来やすい環境にもなってしまいます。

それから夜遅く寝る前に食べるのは控えましょう。

寝ている最中は唾液が減少します。

唾液がたくさん出ている状態は酸性に傾いた口腔内を中性に戻す働きがありますので、寝てしまう前にしっかり歯磨きをして洗い流す必要もあります。

また、寝ている最中に消化をしていると、胃酸が逆流しやすくなります。元々、逆流性食道炎の既往がある方はしっかりと治療もしましょう。

②歯磨きの仕方

2つ目に歯磨きの仕方に気をつけましょう。

歯磨きの際に力を入れ過ぎると摩耗してしまいます。

それに加えて硬い歯ブラシを使うとなおさら加速させてしまいますので注意しましょう。

既に歯に喪失がみられる場合は視覚過敏症状も現れているかも知れません。

その場合は知覚過敏用の歯磨き粉に変えてみましょう。

知覚過敏用の歯磨き粉は知覚過敏症状を抑制する成分のみではなく、歯を削る研磨剤も含有量が少なかったり、もしくは含まれない物もあります。

歯磨き粉に関しては歯科医院で是非相談してみて下さい。

お口の中を見て患者さんにあった歯磨き粉をお薦め出来ると思います。

また、歯磨きだけではなく食事についでのアドバイスもできます。

③歯ぎしりや噛み合わせの対策

 先ほどアブフラクションのお話をしました。

歯に過度な力や非適切に力が掛かっている場合はそれに対する処置が必要です。簡単な物では噛み合わせの調整をする事で予防ができます。

但し、噛み合わせの調整は一度行ったから終了と言う訳ではありません。

その人の咬み方、噛み癖によっては時間経過と共にまたお口の中では歯の咬耗が生じます。

また天然の歯、金属の歯、入れ歯やセラミックの歯、お口の中に使われている材料は色々ありますが、擦り減るスピードが違います。

その為、今まで問題が無かったとしても気付かないうちに擦り減りに差が生じていると一部分に負担が生じ始める事があります。

これは毎日の生活でほんの僅かに変化していくものなので自覚は殆どありません。ですので定期検診の中でチェックしてもらう事が重要です。

そして調整では対応しきれない場合はマウスピースを入れる事で対応します。

始めは違和感を感じるかも知れませんが、継続して使っている方は無いと不安になると言う方もいるくらい御守りになります。

4.NCCLの治療

NCCLの治療は予防の他に症状に応じた治療法があります。

まず知覚過敏症状がある場合、歯牙の喪失部分をレジンという材料で埋める治療があります。

知覚過敏症状が軽度で喪失部分が少ない場合、レジンが詰められない場合もあります。そういった場合は知覚過敏抑制剤を塗っていきます。

一度で症状が落ち着く方、何度か繰り返し塗る必要がある方、それぞれ症状には個人差があるのでそれに応じての処置になります。

その治療と合わせてマウスピースを使ったり、歯磨きの仕方の指導も行っていきます。

まとめ

今回はNCCLについてお話しましたが、なかなか気付かないうちに進んでいる事が多い様です。

NCCLのでき方は人それぞれで、年齢問わず若い人でも生じます。若い方は比較的しみる症状が出やすい傾向があるそうです。

その反面年齢を重ねていると症状が出にくい人が多い傾向にある為、進行している事に気づいていないこともあります。症状が酷い場合、最悪歯が折れてしまう事もあります。

また、歯肉退縮がある歯は歯の表面(エナメル質)より、露出している根(セメント質)の方が柔らかいためブラッシングによる擦り減りは生じやすくなります。

ですので、定期チェックで必要に応じて対処することをお薦めしています。

当院では初診時にお口の中の写真を撮らせて頂いております。それと見比べて変化がどの程度起きているか見比べる事が出来ます。

かかりつけ医を持つことで経年変化を見てもらうようにしましょう。

そらいろファミリー歯科

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