虫歯予防は歯磨きだけじゃない?

毎日きちんと歯磨きをしているのに、なぜ虫歯になるのでしょうか?
虫歯は小さいお子さんから年配の方までさまざまな年代に生じますが、近年高齢化が進む我が国日本でも高齢者による虫歯が増えています。
小さい子供からお年寄りまで悩ませる虫歯。
毎日食後3回一生懸命磨いているのにできてしまう虫歯。
虫歯予防は実は歯磨きだけじゃないのです。
今回は虫歯予防についてのお話です。
そもそも虫歯とは?
虫歯(専門用語では、「う蝕」と言います)聞くと痛みと連想する方も多いのではないでしょうか。
しかし虫歯と一言で言っても進行度合いによっても症状の出方は様々で、比較的小さく見えるものでも痛みを感じたり、真っ黒くなっていても痛みを感じないものもあるのです。
歯科の2大疾患と言われる虫歯は罹患している方も多く、生活習慣が大きく関与する疾患です。
虫歯は進行してしまうと自然治癒ができない疾患です。
従って歯科医院での治療が必要になります。
小さなお子様からお年寄りまで誰にでもなり得る虫歯は、私たち歯科医療従事者も予防にはとても頭を悩ませます。
なぜなら虫歯は多くの因子が関係して発症するので、様々な視点から患者さんにアプローチする必要があるからです。
虫歯の進行度による分類
歯科検診で「シー」と言われた記憶はありますか?
歯科用語で「シー」はCaries(カリエスと読みます)の頭文字をとった略語です。
つまり「C」と言われた人は虫歯があるという事になります。
虫歯は軽度から重度までを5段階で分類しています。
C1からC4、そして虫歯になる前段階の要観察歯であるCO(シーゼロではなくシーオーと読みます)があります。
①CO
歯の表面構造のエナメル質にザラザラした感じになったり、白く濁った色(歯科ではホワイトスポットと言います)や、茶色がかったりした状態でまだ穴にはなっていないものを言います。
この状態であれば再石灰化を促せば虫歯に移行しないこともあります。
但し自分では見つけにくく、歯科医院で見つかることが多くあります。
②C1
エナメル質に限局した虫歯になります。
歯の表面のエナメル質には神経が通っておらず知覚がありません。
ですので、この段階の虫歯では痛みを感じることは、ほぼありません。
表面に茶色や黒っぽい比較的小さな穴ができ始めるので、よく観察されている方は気づくこともあります。
この状態であれば麻酔もなく、削って詰めるまでその日で治療が完結することが多いです。
③C2
エナメル質から中の象牙質まで進行したものを言います。
象牙質は象牙細管という中に小さな穴の空いた組織が集まって構成されており、そこから中の神経に刺激が伝わりやすくなるため痛みを生じるようになります。
冷たい物や甘い物、または触ると痛みを感じることがあります。
C2は必要に応じて麻酔を使用します。
削って詰める他に、型をとって技工士さんに詰め物を作ってもらい、2回の治療がかかる事もあります。
④C3
歯の中にある神経(歯髄と言います)まで達したものを言います。
歯髄まで達すると歯髄に細菌感染が起こり、神経に炎症が起きます。
この状態を歯髄炎と言い、とても強い痛みを伴うことがあります。
ここまで来ると神経を取り除く処置が必要になります。
麻酔は使いますが強い炎症があると効きにくいことも多くあります。
神経をとった後は根管治療という神経の入っている部屋を消毒したり、補強の土台を立てたり、型取りをしたりと治療には数回通う必要が生じます。
⑤C4
虫歯が進行し歯根まで達した状態を言います。
神経が壊死しているため強い痛みを感じないことが多いですが、根の先の骨の中でも膿が溜まりそれが多くなると痛みとして感じることもあります。
ここまで来ると歯を残すことが困難になり、治療方法は抜歯になることが多いです。
場合によっては抜いて終了という事もありますが、歯を失って噛みにくくなったり、見た目も損なわれるため、ブリッジと呼ばれる失った歯の両隣を削ってつなぐ治療や入れ歯を作るためにある程度長期の治療期間を必要とすることがあります。
虫歯の原因とリスク
虫歯はチョコレートやアメなど甘いものを食べると出来ると思っている方も多いのではないでしょうか?
しかし虫歯は甘いものを食べなければできない訳ではありません。
虫歯の原因はたくさんあります。
①食事
そもそも虫歯は細菌の産み出す酸によって歯が溶かされる事により穴ができた状態を言います。
そしてその細菌は様々な種類の糖を摂取する事で酸を産生します。
糖というと砂糖など甘いものを連想します。
しかしご飯やパン、うどんやパスタなどの炭水化物も虫歯菌のエサになります。
また食事といっても内容だけではありません。
食べる時間が長い人、間食が多い人も虫歯のリスクは高くなります。
こういった人は口腔内に細菌のエサが長く留まるため、酸性状態が長くなります。
つまり例えチョコレートを食べてもすぐ歯磨きする人と、30分飴玉を舐めている人とではリスクに差が出ることはご理解頂けると思います。
職業柄、調理師さんやお菓子職人さんなど飲食に関わる方は味見をする機会も多いと思います。
しかしその都度歯磨きをしたり、うがいをする人は少数なのではないでしょうか。
トラックなどの長距離運転をする方でも眠気予防にガムを噛んだり、コーヒーを飲んだりすると思います。
この時のガムが糖分を含んでいた場合、そしてコーヒーは無糖であってもコーヒー自体が酸性食品のため歯を溶かしやすくなります。
もちろん個人差はありますが、こういった方もリスクが高いことがあります。
②細菌
また細菌が多い口腔内も虫歯の発生には関与します。
虫歯菌は以前から母子感染が原因になっていると言われていた事をご存知の方もいるかと思います。
しかし、近年では虫歯菌はミュータンス菌などの強力な酸産生菌のみが原因ではなく、口腔内の細菌バランス全体も影響すると言われています。腸内では善玉菌と呼ばれるものでも他には影響することもあるため特定の細菌だけが悪ではないということになります。
ですので、虫歯を作る菌すべてを除菌することがとても難しいのです。
③宿主
宿主(しゅくしゅ)とは歯自体の酸に対する抵抗性や唾液の作用のことを指します。
まず唾液の性質も大きく関与してきます。
唾液は酸性に傾いた口腔内をたくさん唾液が出ることで中性に戻そうとする働きがあります。
加齢や服用するお薬や病気によって唾液が減少する方もいます。
そういう方は虫歯のリスクが高いと言えます。
歯は主にカルシウムとリンで出来ています。
しかし酸に触れるとカルシウムやリンは歯から溶け出します。
これを脱灰と言います。
しかしこの後カルシウムやリンを唾液中から補い再吸収することができます。
これを再石灰化と言います。
この脱灰と再石灰化を繰り返す中で脱灰の量が少なければ虫歯にはなりません。
しかし歯の形状によってはそれでも虫歯になってしまう方がいます。
奥歯などの歯の溝が中で膨らんでいるような場合です。
この場合、歯ブラシの毛が溝の中まで届くことはまずありません。
そのため、虫歯ができる前に溝を埋めて予防する事もあります。
これらが虫歯の主要因と言われています。
しかし細かく見ていくと、その他の要因も多く関係してきます。
生活サイクルや知識の有無、年齢や全身疾患、仕事や所得、経済環境なども影響をしていると考えられています。
そもそも虫歯予防に関心のない方はリスクが高いことが多くあります。
そういう方が歯科医院を受診した際は意識を向けてもらうために私たちもより試行錯誤しながらお話をするよう励んでいます。
今日からできる虫歯予防
虫歯予防にはまず食事とフッ素が基本になってきます。
前項でもお話した通り、食事の質だけではなく食事の回数を見直してみて下さい。
アメやガム、糖分の含まれる清涼飲料水を少し摂取した場合ももちろん1回の摂取とカウントします。
小さなお子さんは3食しっかり食べずに間食のお菓子でお腹を満たしてしまう事も多くあります。
ですので、まずは3食しっかり食べること、そしてそれでもお腹が空く場合は時間を決めて間食をし、その際歯磨きができない時はお水やお茶で口腔内を洗い流せるようにするのも予防になります。
そして歯磨きでは丁寧に磨くことはもちろん、それに加えフッ素を使用しましょう。
フッ素は歯磨き粉やジェル、洗口剤やスプレーに含まれています。
フッ素は歯を強くしてくれます。
それだけではなくフッ素は再石灰化を促進してくれます。
フッ素が口腔内に長く残っているほど虫歯予防には効果的です。
終わりに
様々な虫歯予防の考え方、方法がご理解頂けたでしょうか?
虫歯は生活習慣に影響される疾患でもあります。
ご自分の生活習慣を見直し、そして効率よく虫歯予防をするために自分にはどんな注意が必要なのか?改めてご自分のお口の健康に意識を持って頂き、一度歯科医院で相談をして頂けたらと思います。
