お子さんのむし歯を防ぐ甘味料とおやつの選び方

むし歯予防と食習慣には深い関係があります。特に、お子さんにとって「お菓子」や「おやつ」は楽しみだけでなく、味覚形成や成長に関わる大切な要素です。
このコラムでは、代表的な甘味料の特徴や注意点、お子さんのおやつの摂り方や食生活のポイントについて解説します。
キシリトールの効果と注意点
キシリトールは、むし歯を防ぐ甘味料として広く知られています。白樺やブナ、トウモロコシの芯などに含まれる多糖類を原料にして作られる「糖質系甘味料」です。砂糖とほぼ同じ甘さを持ちながら、エネルギーは砂糖のおよそ75%と控えめです。
インスリンとは無関係に代謝されるため、血糖値が上がりにくいのも特徴です。むし歯の原因菌のエネルギー源にもなりにくいため、口内の細菌バランスを整える効果も期待されています。こうした特性から、キシリトールは数少ない「むし歯予防効果のある甘味料」とされています。
一方で、注意も必要です。キシリトールは消化吸収されにくく、大腸にそのまま届きます。キシリトールの濃度が高まると、腸内の浸透圧が高まり、腸内に水分が引き寄せられます。下痢や腹部の不快感を起こすことがあるため、お子さんや、下剤を使用している方は摂取量に注意しましょう。
また、非常にまれですが、アレルギー報告もわずかにあります。さらに、米国小児歯科学会は、「これまでのキシリトール研究は現実的でない高用量での検証が多く、今後は日常生活に即した検証が求められている」と指摘しています。
むし歯予防などからだへの良い影響も期待されていますが、今後の研究で、より現実的な効果が明らかになると思われます。体調に合わせた使用をおすすめします。
人工甘味料とむし歯予防の関係
「人工甘味料」も、むし歯の原因菌のエネルギー源になりにくく、むし歯予防に役立つとされています。
甘味料は、糖質から作られる「糖質系甘味料」(キシリトールなど)と、糖質を原料としない「非糖質系甘味料」に分けられます。非糖質系の中には、ステビアや羅漢果といった天然由来のもの、そしてスクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムなどの、人工的に合成された「人工甘味料」があります。
人工甘味料は、天然甘味料よりも強い甘味があります。カロリーが低く、体内でほとんど代謝されないため、体重増加や血糖値上昇を直接引き起こすことはありません。
また、現在使用が認可されている人工甘味料は、免疫や神経系、生殖機能などへの影響について多数の動物実験で調査、研究されており、通常の摂取量ではからだへの危険性はないとされています。ただし、甘味料の感受性には個人差があり、アレルギー症状が出たり、便が緩くなる方もいます。
一方で、血糖値が上がらない甘味が、食欲増進を促す可能性も報告されています。これは、本来の「甘味を感じる→血糖値が上がる→食欲を抑える」というサイクルが乱れて、食欲が抑制されないためだとされています。
人工甘味料は、食品だけでなく歯磨剤や薬剤にも使われ、むし歯予防やカロリー制限の効果が期待されています。一方で、甘味が強い食品を習慣的に摂ることで、結果的にエネルギー摂取量が増える可能性があります。体調に合わせて使用するとよいでしょう。
お子さんのお菓子と砂糖との上手な付き合い方
お子さんにとって楽しみのひとつであるお菓子ですが、むし歯や偏った味覚の心配もあり、悩ましいところかと思います。
子どものおやつは、栄養とエネルギーの補給という大切な役割があります。消化機能がまだ未発達な幼児期は、1回の食事で食べられる量が限られているため、1日に必要なエネルギーを補う「第4の食事」としておやつは欠かせません。3歳を過ぎると、必要なエネルギー量は成人女性の約3分の2にも達します。
市販のお菓子を与えるのは、できるだけ遅い時期がおすすめです。味覚は、離乳食の始まる5か月頃から10歳頃までの食体験で形成されます。特に、3歳頃までは重要な時期とされており、この期間に甘いお菓子を多く与えると、甘味への欲求が強まり、野菜など素材本来の味をおいしいと感じにくくなる傾向があります。食の好みも偏りやすくなるため、市販のお菓子を与えるのは、可能であれば3歳を過ぎてからがよいでしょう。
市販のお菓子には次のような注意点があります。
・甘味が強く、むし歯や味覚形成への影響や、エネルギーの過剰摂取、血糖値の急上昇を招く
・塩分が多く、味覚形成への影響、将来的な高血圧に繋がる可能性がある。
・油分が多く、肥満に繋がりやすい。
・着色料や保存料などを含む場合があるため、健康面で気になることがあります。
理想を言えば、おやつは手作りが安心です。負担にならないよう、簡単に作れて、3食の食事では摂りきれない栄養素を含むものがよいでしょう。
おすすめの手作りおやつは、
・しらすやごま、わかめなどを加えた小さなおにぎり
・野菜など具沢山のサンドイッチ
・自然の甘みが感じられる旬の果物
・蒸かしたイモ類やトウモロコシ
・無糖のヨーグルト(果物やドライフルーツを混ぜてもOK)
手作りする時間は、親子やきょうだいのふれ合いの時間にもなります。無理のない範囲で取り入れてみてください。
きょうだいとおやつ、むし歯にならない工夫
きょうだいのいる家庭では、上の子が食べていると、下の子も一緒に食べたくなりますね。1日3食を食べられる生活リズムを整えた上で、上の子とのおやつの時間は1日1回にして、楽しんで食べてもらいましょう。それ以外の時間には、間食しないようにしましょう。
また、糖分の摂取をコントロールするようにして、
・砂糖の量が多いジュースや甘いお菓子
・口の中に長くとどまるキャンディーなど
・歯にくっつきやすいキャラメルやスナック菓子
これらのお菓子はなるべく避けるようにしましょう。
おやつは手作りがおすすめですが、忙しくて難しいときは、市販のお菓子から「どれを選べばむし歯になりにくいか?」を上の子と一緒に考えて購入してみましょう。食を選ぶ力が育まれ、上の子のおやつを見直すきっかけにもなります。
少食のお子さんの食事回数 むし歯との関係
少食のお子さんの場合、「食事の回数を分けて栄養を確保するように」とされる一方で、「むし歯を防ぐには、食事の回数を減らしたほうがいい」とも言われ、悩まれることもあるかと思います。
少食で栄養やエネルギー不足が心配される場合は、「必要な栄養をしっかり摂ること」を優先しましょう。特に「からだを作る」栄養素が大切で、体重1kgあたりに必要な栄養素の量は、大人よりも多いのです。
お子さんは咀嚼力や消化・吸収の機能がまだ発達途中です。一度の食事で摂取できる量が限られているため、間食やおやつで補う必要があります。
成長の目安には、母子健康手帳にも掲載されている「乳幼児身体発育曲線(パーセンタイル曲線)」を活用するとよいでしょう。成長曲線の範囲になければ、むし歯のリスクよりも、食事回数を増やして栄養を摂取することを優先しましょう。また、体重が少ないけれど成長が順調なお子さんは、食事回数を減らすと栄養不足を招く可能性もあります。
少食の原因には、消化液が出にくいといった体質的なものの他に、夜ふかしなどで食事の時間に食欲がわかない、日中の活動量が少なくお腹が空かない、間食に甘いお菓子をたくさん食べている、などの要因がある場合もあります。
からだを動かして適度に運動し、規則正しく生活することも大切です。
まとめ:おやつ時間を楽しく、健康的に
お子さんのおやつについて、甘味料などにも着目しながら、むし歯やからだへの影響をご紹介しました。
間食の習慣は、早寝早起き、3度の食事などの生活リズムと強く関連しています。また、食事やおやつの時間を「楽しく食べる時間」にすることも、良い習慣を身につけることに繋がります。
ぜひ、親子やきょうだいで楽しみながら、お口やからだの健やかな成長に繋げて頂ければと思います。
