洗口液(マウスウォッシュ)の選び方と効果|むし歯・歯周病・口臭などの予防に役立つセルフケア
口臭や歯周病が気になる、お子さまやご家族のお口の状態が心配だけど、きちんと歯みがきをするのがなかなか難しい…。
時間が無くても手軽に使える「マウスウォッシュ(洗口液)」。気になる方もいらっしゃるかと思います。含まれる成分によって、むし歯予防、歯周病対策、口臭予防など、効果も様々です。
今回は、「洗口液の基本的な働き」「お悩み別の選び方」「使い方のポイント」について、配合されている成分の解説も交えながら、お伝え致します。
洗口液(マウスウォッシュ)の基本と役割

口腔ケアには、2種類の方法があります。
・歯ブラシやデンタルフロスなどで物理的にプラークを取り除く方法(機械的コントロール)
・薬用成分で細菌の働きを抑え、プラークの除去や、付着を抑制する方法(化学的コントロール)
この2つの方法を取り入れることで、効果的に口腔内の健康を保つことができます。
洗口液は、薬用成分で作用する「化学的コントロール」ですので、普段の歯みがきにプラスしてお使い頂くことをおすすめしています。
また、時間のない時に手早く使えるのも洗口液のメリットです。
デンタルフロスは歯の清掃にとても効果的ですが、扱うのが難しかったり、時間が取れない方もいらっしゃるかと思います。
フロスの使い方に慣れるまでは「歯ブラシと洗口液」でお口の中をケアし、慣れてきたら「歯ブラシ、フロス、洗口液」でケアをすると、良い状態を保つことができるようになります。
日中のすき間時間などに気持ちのリフレッシュも兼ねて使えるのも、洗口液の良い所です。
お悩み別・洗口液の選び方
むし歯対策

歯質を強化する、フッ化物配合洗口液がお勧めです。
商品の成分表示に「フッ化ナトリウム」と記載のあるものをお選びください。
お子さまにもおすすめの洗口液です。
★フッ素の働き
食事の後の口腔内は、酸性に傾きます。歯からカルシウムやリンが溶け出してしまいますが、フッ素はこれらを補う「再石灰化」を促します。
また、歯の表面のエナメル質を酸に溶けにくい性質に変え、酸を産生する細菌の働きを抑えます。むし歯対策にとても有効な成分です。
洗口液や歯みがき剤には、フッ素と他の物質とが結びついた「フッ化物」として、安全な濃度で配合されています。
歯周病予防
細菌を抑える成分を含む洗口液がおすすめです。

★歯周病予防の代表的な成分
・グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)
口腔内に長時間残ることができ、高い殺菌効果があります。
国内の販売品には低濃度で配合されており、安全に使うことができます。(0.05%以下)
着色しやすくなりますが、就寝前の使用で色素の沈着を抑えたり、歯科でのクリーニングで着色を除去することもできます。
・セチルピリジニウム塩化物(CPC)
歯みがき剤やのど飴などに広く用いられる、副作用の少ない安全な成分です。
・ベンゼトニウム塩化物
あらゆる種類の菌に作用する、刺激の少ない成分です。手指消毒剤などにも使われています。
・エッセンシャルオイル
植物から抽出されるオイルです。
製品の中には、臨床試験で殺菌効果が実証され、口腔内の細菌叢(細菌の集まり)バランスの偏りや、耐性菌の現出がない、という報告がされているものもあります。
これらの成分は、歯周病原細菌が存在する歯周ポケット内に直後作用するわけではありません。しかし、実験や臨床結果などから、歯周病原細菌が減ることがわかっています。
口腔内の細菌に作用することで細菌全体のバランスが変わり、結果として歯周病予防にも効果があると考えられています。
プラークの付着が少なく、口腔内環境が良好な場合
特別なリスクがなければ、洗口液は必須ではありません。マスキング効果(香料で口臭を一時的に隠す効果)のあるものをお使い頂くのも良いでしょう。
プラークの付着が多い場合

プラークが多いと、洗口液が効果を発揮するのは難しくなります。
「洗口液を使ってみたけど、いまいち効果を感じられなかった…」という場合は、プラークのコントロールが上手くいっていないケースもあると思われます。
まずは、歯科でのケアでプラークを除去し、ご自身に合ったブラッシングを行ってもらうことが大切です。プラークが減ってきたら、お悩みに合わせて洗口液を選んでみましょう。
インプラントを装着している方
過去には、「フッ化物が、インプラント表面のチタンを粗造化(粗くする)可能性がある」と報告されたこともありました。
特に、酸性の状態が長時間続く状態で高濃度のフッ化物があると、チタンの侵食が起きることが懸念されていました。
しかし、実際の口腔内での実験ではなかった為、唾液の働きなども含めて検証した結果、
・長時間、強い酸性の状況で、高濃度のフッ化物が口腔内に残る可能性は低い
・むしろ、フッ化物配合の洗口液や歯みがき剤を使う方が、細菌の働きを抑え、口腔内が酸性に偏ることを防ぐことが報告された
よって、インプラントを装着されている方も、フッ化物配合の洗口液をお使い頂くことができます。お悩みに合わせて洗口液を選んで頂くと良いでしょう。
口臭が気になる場合

口臭には、様々な場合があります。
・口臭があり、口腔内環境に由来する場合
・口臭はあるが、口腔内ではなく、他の器官の状態や疾患の影響である場合
・口臭があり、薬剤の副作用などでドライマウスになっている場合
・実際には口臭は無いが、気になる、という心の状態である場合
それぞれの原因への対処が最も重要です。
口腔内で口臭が起きている場合は、舌苔(舌の表面に付着する、白い苔のような層)や、歯周病による場合がほとんどですので、これらへのケアが大切です。
洗口液は、以下の成分入りのものがおすすめです。
・口臭の原因物質であるVSC(揮発性硫黄化合物)を抑える成分
塩化亜鉛
・口臭の原因物質を作り出す細菌を殺菌・増殖抑制する成分
グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)、セチルピリジニウム塩化物(CPC)、ベンゼトニウム塩化物、エッセンシャルオイル、プロポリス、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、など
・VSCの消臭と、殺菌・静菌作用を持つ成分
二酸化塩素、茶カテキン、など
ドライマウス(口腔乾燥症)
お口の渇きにも、様々な要因があります。
・唾液腺の機能障害
シェーングレン症候群、加齢性口腔乾燥症、など
・神経性口腔乾燥症
ストレス、抑うつなどの状態や、脳腫瘍などの中枢性病変、など
・薬物性口腔乾燥症
向精神薬、抗パーキンソン薬、抗高血圧薬、などの影響
・口呼吸による乾燥感
原因への対処が重要ですが、対症療法として洗口液をお使い頂くことができます。
アルコール入りのものは渇きを感じることがある為、
・ノンアルコールタイプ
・保湿成分配合
の洗口液がおすすめです。
ゆすいで使うものの他に、
・スプレータイプ:日中や外出先でも手軽に使える
・ジェルタイプ:長時間効果が持続する(歯みがきでプラークを除去してから使用する。入れ歯の内面に塗るのも効果的)
これら製品もございますので、使いやすいものをお選びください。
★アルコールタイプとノンアルコールタイプの違い
アルコール含有の洗口液と、ノンアルコールタイプのものとで比較した実験では、
・アルコールタイプがより作用する場合
・両者ではっきりとした差がない場合
どちらも報告されており、2つのタイプは、同じ程度には菌へ作用することはわかっています。お好みの使用感で選んで頂くと良いでしょう。
・アルコールタイプ:刺激があり、口が渇く感覚を持つ方もいます。スッキリとした使用感です。
・ノンアルコールタイプ:マイルドで、口渇感がある方も使いやすいです。
当院で取り扱っている洗口液について

当院では、以下の洗口液の取り扱いがございます。
むし歯予防
・フッ化ナトリウム洗口液0.1%「ビーブランド」
歯科専売品です。歯質を強くするフッ素が高濃度に配合されています。
うがいが上手にできれば、お子さまにもおすすめの洗口液です。
歯周病、口臭対策
・Systema SP-Tメディカルガーグル
殺菌成分(CPC)が配合されており、お口の中の細菌の増殖を抑えます。
口臭を除去するl-メントールも配合されています。アルコール含有タイプです。
*お口の渇きがある方には、唾液腺マッサージなどのケアをお伝えしています。口腔内の状態に合わせて、ケア方法や、おすすめのケア用品をご案内しております*
洗口液の使い方Q&A
Q.使うタイミングはいつが良いですか?
A.「歯みがき後」がご使用のタイミングです。
ただ、
・歯みがき剤の成分と反応して効果が弱まることがある
・歯みがき剤の成分を洗い流してしまう場合がある
ですので、歯みがき後に少し時間を置いて使って頂くと良いでしょう。
就寝前もおすすめです。眠っている間の細菌の増殖を抑えることができます。
また、日中などは使いたい時に使って頂くと、気持ちのリフレッシュにも繋がります。
Q.使用後にブラッシングをするよう表記のある商品の場合は?
A.同じ液体タイプで販売されていますが、ゆすいだ後にブラッシングが必要なものは「液体歯磨き」という分類の商品です。
★洗口液と液体歯磨きの違い
・洗口液
すすいで吐き出します。「マウスウォッシュ」とも呼ばれます。
歯みがきにプラスして使い、ブラッシングが不要なタイプです。
・液体歯磨き
すすいだ後にブラッシングします。市販品により名称は異なりますが「デンタルリンス」とも呼ばれます。
歯みがき剤の一種で、研磨剤は含まれていませんが、歯のすき間などに浸透しやすいです。
このコラムでは「洗口液」についてご紹介しております。用途に合わせてお選びください。
Q.定期的に歯科でクリーニングをしていますが、洗口液は必要ですか?
A.洗口液は、歯科でのクリーニングの直後から使って頂くと、より効果的です。
専門的なケアを行っても、その後放っておくと、2日程度で口腔内の菌は元通りになってしまいます。
洗口液は、むし歯や歯周病などの予防を目的として作られている為、プロフェッショナルケアの後から使うと良い状態を維持できます。お悩みに合わせてお家でのケアに加えてみてください。
Q.味が苦手なのですが…
A.継続してお使い頂くことが大切です。無理に使用せず、ご自身の使いやすいものを選んで活用なさってください。少し薄めて使って頂いても効果があります。
Q.洗口液にデメリットはありますか?
A.一部の成分で、歯面が着色しやすくなる場合があります。就寝前にお使い頂くと、食品の色素が沈着しづらいです。歯科での歯面清掃でも着色を落とすことができます。
Q.子どもは使用できますか?
A.うがいが上手にできれば、何歳からでもお使い頂けます。歯質を強くするフッ化物洗口液がおすすめです。誤って飲んでしまわないよう、手の届かないところに保管してお使いください。
Q.間違って飲んでしまったら?
A.一回分を大人が飲んでしまった程度でしたら、問題ありません。水や牛乳を飲んで様子を見てください。お子さまの場合は、製品を持って医療機関を受診なさってください。
まとめ|洗口液を「歯みがきにプラス」して、お口の健康を保ちましょう
洗口液(マウスウォッシュ)は「歯みがきにプラスする」ことで効果を発揮するセルフケア用品です。
歯科でのクリーニングも活用しながら、目的に合わせてお使い頂き、むし歯予防・歯周病予防・口臭対策などにお役立てください。
ご使用について迷うことがありましたら、お気軽にご相談くださいね。