被せ物も白い歯で 保険適用も広がるCAD/CAM冠と、院内システムについて

2025年09月05日(金)
白い歯冠

虫歯などで歯を削った後、以前はいわゆる銀歯と呼ばれる金属製の補せ物をするのが一般的でした。

しかし近年はデジタルで設計し機械で削りだす「CAD/CAMシステム」を用いた補綴物(欠けた部分の修復に使う人工の歯や構造物)の作製が広まっており、「白い歯にしたい」というご希望に応えられるよう、技術も進歩しています。

保険診療での適用も拡大されており、多くの方が白い歯を選べるようになりました。

また、病院内にCAD/CAMシステムでの製作環境を備える医院も増えています。

より美しく丈夫なセラミック素材の加工もでき、短期間で精度の高い被せ物を作ることも可能になってきました。

今回は、白い歯を実現するCAD/CAMについてご紹介します。

1.CAD/CAM冠とは?デジタル技術で作る白い歯

歯科技工機械

CAD/CAMとは「Computer-Aided Design(コンピュータ支援設計)」と「Computer-Aided Manufacturing(コンピュータ支援製造)」の略称で、3Dのコンピュータデータを使って歯の被せ物や詰め物を設計し、専用の機械で削り出して製造する技術です。

保険診療で使う白いレジンや、自費での診療に用いるセラミック材の削り出しができ、従来の手作業では難しかった均一で高精度な補綴物の作製を実現できるようになりました。

さらに、一度作製したデータは保存が可能で、破損や紛失の際にもスムーズに再作製ができます。

2.白い歯の材料 ハイブリッドレジンとPEEK

輝く白い歯の被せ物

保険診療では、主にハイブリッドレジンと、PEEKと呼ばれる材料が使われます。

2.1 ハイブリッドレジン

  • 超微粒子のセラミックとレジンの混合物です。
  • 自然な歯の色に近く、美しい仕上がりが特徴です。
  • やや硬めで加工しやすい材料です。
  • 吸水性があるため、長期間の使用で多少の変色が起こることがあります。

2.2 PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)

  • 耐久性が高く、軽量な高分子素材です。
  • 生体親和性に優れた安全な素材です。
  • 吸水しにくく、長く使っても変色しにくいです。
  • 柔らかめの素材で噛み合う相手の歯を痛めにくく、大臼歯の補綴に適しています。
  • 透明感が少なく、色はアイボリー系ですが色調は限られる為、審美性を特に求める場合には不向きです。

3.CAD/CAM冠のメリット・デメリット 銀歯との違い

歯科用のクラウン

3.1 メリット

  • 審美性が高く、自然で白い仕上がりが得られます。銀歯のように金属色が目立たないため、口を開けたり笑ったときにも自然に見えます。
  • 金属を使わないメタルフリーの為、金属アレルギーのリスクがありません。また、金属材料で生じる歯ぐきの黒ずみも起こらなくなります。
  • 自然歯に近い硬さで、噛み合う歯を傷つけにくいです。
  • デジタルで設計、製造するため、質の安定した補綴物を作れます。
  • 保険適用で、比較的安価に白い歯を提供できます。

3.2 デメリット

  • 金属冠に比べると強度が劣り、破損や摩耗の可能性があります。特に歯ぎしりや食いしばりが強い方は注意が必要です。
  • 時間の経過とともに一部変色することがあります。
  • 土台形成のために歯を削る量が、金属冠より多い場合があります。
  • 保険適用の範囲には制限があり、使用できない場合があります。

4.どこの歯に使える?使用部位と条件

保険適用のハイブリッドレジン

2014年にハイブリッドレジンが小臼歯で保険適用になって以来、制度改正を重ねて、2024年6月には、条件付きながらもほぼ全ての歯で白いCAD/CAM冠を保険診療で使えるようになりました。

4.1 前歯、小臼歯(前から3番目までの歯と、前から4、5番目の歯)

過度に噛む力がかからず、装着に問題が無ければ使用できます。

4.2 大臼歯(前から6、7、8番目の歯)

 CAD/CAM冠が破損しないよう、条件を設けている場合があります。

  • ハイブリットレジンの被せ物
    過度に噛む力がかからず、装着に問題が無いことに加え、噛み合う歯の状況・左右の奥歯のかみ合わせについての要件を満たせば使用できます。
  • PEEK素材の被せ物
    過度に噛む力がかからず、装着に問題が無ければ使用できます。
  • 部分的な詰め
    過度に噛む力がかからず、装着に問題が無いことに加え、噛み合う歯の状況・左右の奥歯のかみ合わせについての要件を満たせば使用できます。
  • 歯の根の治療をした場
    大臼歯で歯の神経を取った場合、歯の生え方や残存の状況によって、「エンドクラウン」と呼ばれる支台と被せ物の部分が一体になった形状の補綴物を使用できる場合があります。歯を削る量が少なく済み、歯を残しやすいことが特徴です。

4.3 金属アレルギーの方

例外的に使用できる場合がありますので、医師にご相談下さい。

※複数の歯をつなぐブリッジでは、使えません。
(前歯のブリッジについては、表側のみ白いレジンで覆った金属材料で作ることが可能です。)

5.より短期間で治療を 院内CAD/CAMシステムの広がり

院内CAD/CAMシステムのイメージ

CAD/CAM冠は、これまで、病院外の技工所に作製を依頼するのが一般的でした。近年は、院内にCAD/CAMシステムと機器を導入し、自院で設計から製作まで行う歯科医院が増えています。

5.1 作製の流れ

スキャン:口腔内スキャナー、または印象材料による型取り(*)
 ↓
設計:専用のCADソフトで形や嚙み合わせを調整し設計
 ↓
製造加工:ミリングマシンと呼ばれる専用の加工機で削り出し
 ↓
装着:患者さんのお口に合わせて微調整し、装着

(*)口腔内スキャナーとは、お口の形を光やレーザーでスキャンする、小型カメラのような機械です。従来のように粘土タイプの材料で型取りをする必要がなく、患者さんの負担が少ないです。

現在、保険診療で口腔内スキャナーの使用が認められているのは、CAD/CAMで部分的な詰め物を作製する場合に限られています。作製物によっては、従来の方法で型取りする場合もあります。

当院でも、院内システムの導入を進めております。

技工所へお願いしていた時間を短縮し、治療をより速く進められます。

6.ジルコニアなどの作製も 診療の質を上げる院内CAD/CAMシステム

歯科治療を受ける女性

CAD/CAMシステムは、保険外の診療に使う補綴物なども作製できます。

被せ物や詰め物であれば、耐久性に非常に優れたジルコニアや、美しさと強度を兼ね備えたe.max(イーマックス)などの、セラミック素材の加工が可能です。

CAD/CAM冠より審美性、耐久性ともに優れています。嚙み合わせが強い場合など、CAD/CAM冠の適用が難しい場合にも作製のご相談ができます。

また、インプラント手術に使うサージカルガイド、カスタムアバットメント(インプラントの支台部分で、患者さんに合わせて個別にご用意したもの)なども作製できます。

こうした院内システムの活用により、

  • 製作期間の短縮
  • 口腔内スキャナーでの型取りにより、患者さんの負担を減らす
  • 診断から設計、製作までを院内で管理し、細かな対応や、より高い適合性を持たせられる

以上のような利点があります。審美性や機能性、健康面への影響などを一体的に考慮して、皆様一人ひとりに合った治療の提供ができます。

7.まとめ ─より手軽に、質の良い白い歯を

白い歯を指さす女性

近年の保険診療の充実により、CAD/CAM治療はより手軽に選べるものになりました。

当院でも院内システムの導入を進め、治療の効率や品質の向上に努めております。

また、保険外の診療で扱う素材なども院内システムを活用し、これまで以上に使いやすく、美しい補綴物を提供して参りたいと思っております。

白く美しい歯で、心身ともに健康に過ごしていきましょう。

そらいろファミリー歯科

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