喫煙が歯に与える影響とは? お口の健康を守るためにできること

2025年10月09日(木)
タバコを吸う女性

皆さんは、タバコが歯やお口にどのような影響を与えるかご存じでしょうか。

実は喫煙は肺や心臓の病気だけでなく、歯周病や口腔がんなど、お口の健康に大きな影響を及ぼします。今回は「喫煙と歯の健康」について詳しくお話しします。 

タバコでお口の中はどう変わる?歯周病が進行しやすい理由

タバコの煙と有害物質

タバコの煙には約4,000種類以上の化学物質が含まれます。その中には、アセトン、一酸化炭素、ヒ素など200種類以上もの有害物質が含まれ、そのうち約60種類は発がん性物質と言われています。

タバコの煙はまずお口の中を通るため、口腔内は喫煙による影響を受けやすい場所です。煙が直接触れる影響に加えて、血液に吸収されたニコチンなどの間接的な影響も受けます。

お口の中の歯ぐきや粘膜は、皮膚と同じように重層扁平上皮という構造で覆われ、薄い細胞が積み重なっています。煙の影響は上皮の厚さや、その下にある組織の血管の分布によって異なります。

一般的に、

・歯ぐきは角化して硬くなる
・口腔底(舌の裏と下あごの歯ぐきの間の部分)や舌下、唇、歯の根元の粘膜は薄くなる
・硬口蓋(上あごの硬い部分)や舌の表面は厚くなる

このような変化が生じます。

特に口腔底の粘膜は、物質を通しやすい性質を持っており、タバコの煙の影響を強く受けやすい部位です。

出血は無くても…気づきにくい喫煙者の歯周病

ニコチンは交感神経を刺激し、末梢血管を収縮させるため血管を縮める作用が強く、歯ぐきの血流を減らしてしまうため、歯周病の進行を早めてしまいます。  血の巡りが悪くなると、酸素や栄養が十分に届かず、歯ぐきが健康を保つ力が弱まります。 

通常、歯周病になると、歯ぐきは腫れて赤くなり、歯磨きなどの刺激で出血しやすくなります。ですが、喫煙していると血管が縮んで出血が起こりにくいため、歯周病が進んでいても気づきにくいのです。さらに、喫煙によるメラニン色素の沈着で歯ぐきが黒っぽく見えることもあり、炎症のサインである歯肉の赤みが隠れてしまいます。結果として、症状を自覚しないまま歯周病が悪化するケースが多く見られます。 

ニコチンは細胞の働きにも影響します。歯ぐきの修復を担う「線維芽細胞」の働きを抑えるため、コラーゲンなどの生成が減り、歯と歯ぐきの付着がうまく行われなくなります。その結果、歯と歯ぐきの間が広がり、歯周ポケットが深くなっていきます。 

さらに、喫煙者の口腔内では、非喫煙者に比べて特定の歯周病菌の割合が多いと報告されています。

喫煙と免疫機能の乱れ

喫煙は体の防御反応にも影響を及ぼします。正常に働くべき白血球や抗体の機能を低下させたり、逆に炎症を過剰に引き起こして健康な組織を破壊したりします。そのため、喫煙者は感染症にかかりやすく、歯周病が重症化しやすいという特徴があります。 

タバコで歯を失うリスクも?歯を支える骨の喪失

タバコの成分は、歯ぐきや歯周組織に炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)などの分泌を増やします。

これにより「歯槽骨吸収」が起き、歯を支える骨が徐々に失われていきます。

炎症は、本来は細菌などの感染を防ぐための現象ですが、過剰だと健康な組織まで壊してしまうことがあります。 

タバコの影響での増加が確認されている物質

・TNF-α(ティー・エヌ・エフ・アルファ/腫瘍壊死因子)
・IL-1(インターロイキン-1)
・PGE₂(プロスタグランジンE₂)

など

これらの物質は炎症を強め、歯と、歯の土台となる骨(歯槽骨)との間の膜が破壊されます。そして、炎症そのものや歯周病菌から出る毒素によって、歯槽骨が溶けていきます。これを骨吸収といいます。

喫煙によって気づかないうちに進む歯周病が、歯を失うリスクも高めています。

喫煙者に多い歯周病のサインとは?

喫煙している方の歯周病には、次のような特徴が見られます。 

・歯ぐきが固く厚くなる(「線維性肥厚」。線維芽細胞の働きが低下することで起きます)
・歯周病が重度に進行していても、腫れや赤みなどがあまり見られない
・歯垢(プラーク)や歯石の量に比べて、歯周病の進行が進んでいる
・歯の表面にヤニ汚れがある
・歯ぐきに黒っぽい色素沈着が見られる(歯肉メラニン色素沈着)

ヤニで汚れた歯

このように、喫煙者の歯周病は「出血が少なく、炎症が軽く見えるのに実際は重症」というのが大きな特徴です。「出血が少ないから安心」とは思わず、定期検診で歯ぐきの状態を確かめていただくことが大切です。

その他、喫煙で見られる所見として、

・審美障害、咀嚼・嚥下・発音などの機能の低下
・白板症(*)、口腔がん、口唇がん、カタル性口内炎、歯肉メラニン色素沈着

などがあります。

また、妊娠時の喫煙では、胎児に口唇裂・口蓋裂(**)が見られることがあります。

(*)口腔白板症…口腔粘膜が白く、こすっても剥がれない病変。長期化した場合などは口腔がんになる可能性がある

(**)口唇裂(こうしんれつ)・口蓋裂(こうがいれつ)…胎児の成長過程で唇や上あごの形成がうまくいかず、割れた状態で生まれてくる疾患。哺乳や発音などに影響があり、長期的な治療が必要となる

受動喫煙とお口の関係

受動喫煙も、お口の中に影響があります。

歯肉の色素沈着や、歯周炎、むし歯などが起きやすくなります。

子どもの発達と受動喫煙

一部の研究では小児がんやADHDとの関連が示唆されていますが、因果関係は明確ではありません。

子どもの歯ぐきの色素沈着

歯ぐきが黒っぽく変色する「歯肉メラニン色素沈着」が起きることがあります。外からの刺激に対して、自らを守ろうとする生体防御反応の一種です。

小児では、喘息やアレルギー疾患に比べても、高い割合で現れることが報告されています。 

受動喫煙だけがメラニン色素沈着の要因ではなく、口呼吸の習慣や肌の色、免疫反応の違い、遺伝的な体質なども関連していますが、受動喫煙との相関性は指摘されています。

お子さんの成長のため、タバコの煙からは遠ざけてあげてください。

禁煙で取り戻せる歯ぐきの健康

禁煙により、次のような変化があらわれます。

・歯ぐきの血流は、早期に回復します。出血などで歯肉の変化に気づきやすくなります
・歯科での歯周病治療の効果が出やすくなります。
・歯を失うリスクは、禁煙後5〜10年で非喫煙者と同等レベルに近づくと報告されています

加熱式タバコや電子タバコなら安心?実は注意も必要

禁煙のために「加熱式タバコ」や「電子タバコ」に切り替える方も増えています。

日本で販売されているニコチンを含まない電子タバコもありますが、加熱式タバコには依然としてニコチンが含まれています。

また、その他の有害物質は、紙巻きタバコよりもこれらのタバコの方が多く含まれることもあります。 

また、従来のタバコに比べて吸ったときの満足感が低いため、本数が増えてしまったり、長期的な使用で喫煙の習慣を断つことが難しくなる場合もあります。

ひとりでは難しくても -医療でできる禁煙のサポート

タバコを控えることはつらいものですが、何度もトライして成功する方も多くいらっしゃいます。禁煙に挑戦する際には、医療機関のサポートも活用なさってみてください。

おわりに

綺麗な歯で笑う女性

喫煙は、気づかないうちに歯周病や口腔がんなどのリスクを高めてしまいます。禁煙によってお口の状態は少しずつ改善し、歯を守る可能性が広がります。気になることがあればお気軽にご相談ください。定期的な検診でのチェックもご活用くださいね。

そらいろファミリー歯科

TEL 011-215-8141

〒063-0866 札幌市西区八軒6条東2丁目 8-2八軒六条舘1F

診療時間
9:30〜13:00
14:00〜18:30
14:00〜17:30
●初診随時受付
<最終受付>平日18:00 / 土曜日17:00
<休診日>木曜・日曜・祝日
TOP