ホワイトニングで白く健康な歯へ ~むし歯や歯周病の予防効果も解説します~

結婚式や面接など大切な日を迎える前に、口元を整えたい。
あるいは、笑顔に自信を持って毎日を過ごしたい。
白い歯は、見た目の美しさだけでなく、気持ちまで明るくしてくれます。
歯科で行うホワイトニングは、審美面の改善だけでなく、むし歯や歯周病の予防にも役立ちます。
本コラムでは、その仕組みと効果をわかりやすく解説します。
①医療ホワイトニングの流れと特徴
歯科医院で行う薬剤を使ったホワイトニングは、患者さん一人ひとりの歯質や年齢に合わせて「自然で美しい白さ」を目指します。
1)一般的な治療の流れ
①診査・診断
お口の状態を確認し、患者さんのご希望をお伺いします。
②むし歯や歯周病の治療
むし歯や歯周病がある場合は、まずそれらの治療から始めます。
治療をしないままホワイトニングを行うと、薬剤の漂白効果が出にくくなったり、知覚過敏の症状が出ることもある為、お口の状態を整えてから施術いたします。
③ホワイトニング開始
「オフィスホワイトニング」と「ホームホワイトニング」の2つの方法があります。
・オフィスホワイトニング
歯科医院に来ていただいて行う方法です。専用の薬剤を歯の表面に塗り、特定の波長の光を照射します。光が薬剤の成分と反応し、歯の表面に付着している色素を分解・除去することで歯を白くします。
・ホームホワイトニング
医院に何度も通わず、ご自宅でできる方法です。歯科医院で歯の型を取って作成した専用のマウスピース(カスタムトレー)に、薬剤を入れて使います。
薬剤の種類により、1回60分×10日間、1回120分×14日間などの期間で行っていただきます。
④メンテナンス
ホワイトニングした歯は生活の中で少しずつ色が戻って行くため、白さを保つための歯磨きや、定期的なホワイトニング(タッチアップ)が大切です。歯科衛生士からアドバイスやクリーニングをさせていただきながら、歯を保っていきます。
2)ホワイトニングのむし歯・歯周病予防効果
ホワイトニング薬剤の主成分は「過酸化水素(H₂O₂)」です。これは一般にオキシドールとしても知られ、消毒・殺菌作用を持つ成分です。
また、歯質を強くする効果もあります。
これには「再石灰化」と「ペリクル」が関係しています。
★再石灰化とは
食事をすると、お口の中は酸性になります。また、口腔内の細菌の影響で酸性になることもあります。
酸性下では、歯の表面のエナメル質からカルシウムやリン酸が溶け出します。
歯磨きなどでお口の中が中性に戻ると、唾液に溶け出したカルシウムやリン酸が再び歯に吸収され、結晶化します。
このようなサイクルを「再石灰化」といいます。
★ペリクルとは
歯の表面はエナメル質で出来ていますが、唾液の作用で、さらにその表面に「ペリクル」という薄い膜ができます。歯の表面を守っていますが、むし歯の原因になる歯垢もつきやすくなります。
この薄い膜があることで、再石灰化のスピードは緩やかになります。
ホワイトニングの薬剤は、一度ペリクルを剥がし、ペリクルの無い状態をしばらく持続させます。再石灰化のスピードが速くなる為、歯が硬く強くなり、歯質を強化できます。
3)すべての歯を白くできる?
ホワイトニングで白くなるのは、生まれ持ったそのままの歯(天然歯)のみです。
被せ物などで修復した部分は白くならない為、色味の差が気になる場合は、作り直すことができます。
むし歯などで神経を失くした歯については、別の方法(ウォーキングブリーチという、歯の内側に薬剤を入れる方法)で白くすることができます。
また、ご自身の理想の白さと、客観的に見たときの自然な白さに違いがあることもあります。歯質などに合わせて、その方に適した方法をご提案させていただきますので、皆さまの思いや考えを遠慮なく伝えてくださいね。一緒にゴールを共有しながら、治療に満足していただきたいと思っております。
②よくある質問(Q&A)
Q.何歳からできますか?
A.薬剤により歯がしみることがあります。永久歯の歯根が完成する高校生頃からですと、安心して施術を受けていただけます。
Q.高齢でも白くなりますか?
A.ホワイトニングは、年齢を問わず効果があります。
高齢の方の歯は、若い方と比べると「無機質」という成分が多くなり、歯の石灰化度も高くなっているため、ホワイトニングの効果は出にくくなります。
ですが、口元が美しくなることで、外出やコミュニケーションの機会が増えるなど、生活の質(QOL)の向上に繋がります。
Q.飲食物による着色は落とせますか?
A.飲食物による着色は、クリーニングで落とすことができます。
永久歯が生えてからの変色は、飲食物によるものが一番多いです。
■着色がつきやすいもの
・コーヒー、紅茶、ワイン
・鮮やかな色の飴、ガム、かき氷
・スポーツドリンクやエナジードリンクなど、酸性度が高く色素も含んでいるもの
・ソース、ケチャップ、醤油などの調味料
・ビーツなど自然の色素が強いもの
また、タバコも変色の原因になります。
食事中や食後に、
・水を飲む、うがいをする
・着色しやすい飲み物はストローを使って飲む
(口の中に広がって直接歯に触れる時間を縮める)
・歯磨き
(むし歯予防効果もあり。歯を傷つけずに着色を取る歯みがき剤も多く発売されている)
これらのことをしていただくと、着色の予防になります。ぜひ行ってみて下さいね。
Q.エステやカフェでのホワイトニングとの違いは?
A.サロンでのホワイトニングは「着色を落とす」効果で、漂白効果には限界があります。
歯科医院でのホワイトニングは、厚生労働省の認可を得た医療機器製品を使用し、「歯そのものの変色の改善」ができます。高い漂白効果があります。
近年、セルフエステ(とくにセルフホワイトニング)については契約トラブルなども報告されています。医療ホワイトニングの方が費用は高いかもしれませんが、薬剤の安全性や仕上がり、治療効果なども含めて、歯科でのホワイトニングは安心や満足を感じていただけると思います。
Q.費用はどのくらいですか?
A. およそ3〜4万円です。自由診療のため、各歯科医院で金額は様々です。
金額が高ければより白くなるというわけではなく、使用する薬剤や施術方法の違いが費用に影響していることもあります。
Q.ホワイトニングを避けた方がいい場合はありますか?
A.以下の方は、ホワイトニングができないか、お勧めしておりません。
・無カタラーゼ症の方
ホワイトニング材に含まれる過酸化水素を分解できない体質のため、ホワイトニングを行うことはできません。
・妊娠中、授乳中の方
赤ちゃんへ影響があるのか不明確な為、避けていただくことを推奨しておりま す。また、妊娠中はお口の状態が悪くなりやすく、ホワイトニング前の治療など も難しい為、避けていただく方が良いでしょう。
・光線過敏症の方
日光に当たるとすぐに皮膚が赤くなり、炎症を起こす方は、オフィスホワイトニングで使うブルーライトが刺激になる可能性があります。ホームホワイトニングを選択するなど、 歯科医師へご相談の上で行ってください。
・重度呼吸器疾患のある方
喘息などの疾患がある方は、薬剤の刺激でせき込むことがあります。ホームホワイトニングを選択することをお勧めしています。
薬剤でのホワイトニング以外にも、ポーセレンラミネートベニア修復(着色した歯の表面を薄く削り、白色の薄いセラミックスを装着する)など、歯を白く見せる方法があります。歯科医師へご相談していただき、適切な治療を選んでいただくと良いでしょう。
Q.テトラサイクリン歯と診断されました。ホワイトニングで白くできますか?
A.影響が少なければ、ホワイトニングでも白くすることができます。ただし、色が後戻りしやすい傾向があります。
★テトラサイクリン歯とは
0〜6歳の間、テトラサイクリン系の抗菌薬を大量に飲んでいると、副作用として永久歯の変色が起こります。歯の色が生まれつき茶色やオレンジ、灰色をしていたり、横じまがある場合があります。
現在は広く知られているため、特別な理由が無い限り、変色するほど多くの抗菌薬を処方されることはありません。
ホワイトニング以外の方法が適している場合もあります。まずは歯科医師にご相談なさってみてください。
③ホワイトニングの科学的根拠
歯の変色は、「歯の成分(無機質・有機質)に変色の原因物質が強く結合している」状態です。
ホワイトニング剤の主成分である過酸化水素(H₂O₂) は、触媒によって、強い酸化作用を持つ物質に分解されます。この酸化作用で、歯と変色の元になる物質との結合を分解します。
特に、アルカリ性下で生成される「水酸基ラジカル」はより酸化力が強く、短時間で高い漂白効果を発揮します。最近のオフィスホワイトニング剤は中性〜アルカリ性の材料を中心に作られており、効率よく漂白が行えます。
④おわりに
歯科での医療ホワイトニングについて、むし歯や歯周病への予防効果なども交えてご紹介させていただきました。当院でもホワイトニングのメニューをご用意しております。
気になる方はぜひ一度、ご相談ください。白く健康な歯で、毎日の笑顔と生活の質がより豊かになることを願っております。
